インターネット黎明期の1990年代初頭からSNS全盛の現代まで、中東アラブ諸国をはじめとするイスラーム圏におけるネット空間の発達が現実社会にどのような相互作用を及ぼしてきたのかをテーマとする本書、非常に興味深く読めた。

WEBサイト、掲示板、ブログ、SNSと変遷する情報発信の場。現実世界のテロ行為とリンクした「サイバー・ジハード」は活発になる一方だが、米国企業のサービスに全面的に依存していることは皮肉でもある。

第3章から第4章にかけての「アラブの春」と各種メディアの相互作用の検証が圧巻だ。「フェイスブック革命」などのセンセーショナルな表現の目立った欧米諸国や日本の報道とは異なり、現地でのSNSの果たした役割は小さく、既存テレビメディアと「携帯電話のショートメッセージサービス」こそが重要な役割を果たしたことを著者は立証する。
少なくとも現時点において、SNSはネット世界で有力ではあっても、その利用階層の外にまで広範に訴えかけるには力量不足と言える。ネット空間でのアラブの春の扇動者のその後も音知れず。2015年秋の日本で喧しい反安保法ごっこで話題を振りまいたSEALDsも似たようなものと言えよう。

湾岸戦争やユーゴ戦争などと同様、メディアに都合良く「改変」された「事実」がひろく報道される様子は、これが歴史的事実として永久的に残されることを想うと恐ろしくもある(p99、p106)。メディア・リテラシー、つまりは「情報の質、あるいはそれを見抜く眼力」(p107)が重要であるとは正鵠を得ている。
インターネット2.0時代になって、情報が操作され、事実が作られる恐ろしさは格段に増した。FBやツイッターで発信された「情報」をそのまま鵜呑みにしてはならないってことだな(p79,91,95,98,104)。

イスラームを知る 24
サイバー・イスラーム 越境する公共圏
著者:保坂修司、山川出版社・2014年3月発行
2015年11月29日読了

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