地球環境を巡る議論にインテリジェンスは欠かせない。本書は地球温暖化をめぐる議論のポイントから、世界に冠たるグローバル企業の情報組織力、先進のEUと超大国アメリカ、そしてアジアの事実上の覇権国となった中国の動き、環境面では世界一の技術大国である日本の取るべき道が語られる。

ただし東日本大震災前の対談なので、そこを加味して情報を受け取る必要がある。

・旧西ドイツの緑の党が主張した環境政策。そのムーブメントをドーバー海峡の対岸からが見護りつつ、次の世界システムの構築へと動いたのがイギリスであり、「排出権取引」、すなわち廃棄物に金銭的価値を見出した革命的な構想力が特筆される。1997年の京都会議では開催国日本そっちのけで議論を実質的に取りまとめ、新しい概念「カーボン通貨」を創出し、EU共通政策を経て世界覇権を目指す。老大国イギリスのシステム構想力と強大な影響力はときにアメリカを凌駕する。

・中国の動向には要注意だ。システム=気候変動の枠組みに後から参加し、日本から多数を搾り取ることができる構図(p71)が明らかである以上、どう対抗できるかが問われる。

・民主主義の礎(p138)でもある、情報を受け取る側の「メディア・リテラシー」の重要さが随所で述べられる。報道に接するに、世にいう解説者・研究員の立場・所属組織・バックボーンを把握した上で、メディア組織「内部の論理」も理解し疑いつつ、自分の言葉で咀嚼するのは難しいことだが、確かに重要だな。

・代議制民主主義の本旨(p162)にはまったくの同感。国民投票を主張する勢力による「民主主義の押しつけ」には注意が必要だ。

・「陰謀説」の魅惑と危険、それへの唯一の対抗策=深く考えること。ここがとても参考になった(p118)。「思い込み」による未来予測の難しさも(p121)。

EUに圧倒的に有利な京都議定書は、21世紀最大の不平等条約でもある。インテリジェンスの苛烈で冷酷な世界。戦略なくして加盟した日本には悲壮な覚悟が必要だ。だが嘆いてはいられない。
COP3京都会議からCOP15"コペンハーゲン・ショック"を経てCOP21パリ会議へ。「影響力の大国」(p169)へのチャレンジ。次なる世界システムへの日本の構想力が問われるな。


武器なき"環境"戦争
著者:池上彰、手嶋龍一、角川SSコミュニケーションズ・2010年9月発行
2015年12月8日読了
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