元CIA諜報員・国家情報情報会議情報分析次官、グレン・カール氏によるANALYSIS「THE ROAD TO DAMASCUS ISIS後のシリアと世界の行方」(p22)が本誌特集の中核をなす。
・米・クルド民兵・イラク民兵の反ISIS連合軍によってシリア・イラク内の「ISIS領土」は縮減しつつある。ISISの衰退。だがこれは手放しで喜べるものではなく、そのシンパによるテロの脅威が世界中で増大することが懸念される。そして国家の体をなさないリビア、ロシアのカフカス地方への浸透を図るなど、ISISの次の一手はぬかりない。拡散する脅威への対処はモグラ叩きの様相を見せるのか。
・ISISによるテロ犠牲者数は2386人、日本人を含む処刑者数は実に4225人にのぼる。
・外国人志願者数は激減したとはいえ、それでも月200人を下回ることはない。
・100年前のサイクス=ピコ協定によって「決定」された線引きが見直され、シリアとイラクが再編成される可能性もある。
・ISISとシリア問題の「今後の展開」についての記述は興味深い。ISIS後を巡って米ロ仏などの域外大国、サウジアラビア、イラン、トルコなどの地域大国の思惑が衝突し、新たな火種が作り出される……。シリアの分割は決定的だが、自国民を大量殺戮したアサド氏は、無罪放免となる可能性が高い……。
・今後数年間、欧米で数百人規模の犠牲者が出るテロを筆者は予想する。ISISが核物質、生物・化学兵器を用いないとしてもである。

STRATEGY「ISISとアルカイダが1つになる日」(p28)はどうだろう。犬猿の仲とされ、ISISにお株を奪われたアルカーイダのザワヒリ氏がバグダディ氏になびくとは思えないのだが。

「仲裁裁判がまく南シナ海の火種」
・中国の強硬な反発が何を惹き起こすかは油断ならないが、予想されるフィリピンの悲劇は他人ごとではない。東シナ海紛争への介入を明言したと言え、米国の本音はある政府高官の次の言葉に要約されているのだから。「ただの岩のために、アメリカが本気で世界大戦に突入したいとでも思うか?」(p35)

われわれは歴史のダイナミックな動乱の渦中にいる。本誌を一読してそう感じた次第。