長い世紀末が世界大戦によって終焉し、その後の大量機械生産とスピードという時代のセンスが求めた新しいスタイルが、アール・デコである。
本書はその魅力を歴史、新しい女性の活躍、都市生活の観点から探求する。

・20年代の同時性、スピーディーな共鳴(p12)と機械技術へのロマンティシズム(p25)。クライスラー・ビルの尖塔やカッサンドルのポスターに代表される幾何学的かつ人工的なイメージは、この時代の先端テクノロジーとアートの融合を示すものであり、現代へと続く記号化・複製化=グラフィック・デザインの萌芽・急成長がみられる。

・アール・ヌーヴォーとの対比が面白い。たとえばポスターは、立ち止まっての鑑賞を前提とした複雑なものから、自動車を運転しながらも、遠くから瞬時に目に入れられる力強いデザインへの変遷(p53)、機械と女性、観光、イメージ化など。

・外の世界へ出るようになった女性のライフスタイルは、モード雑誌や映画の普及により、そのイメージが世界的都市に同時代的に広まるようになったのも1920年代の特徴。パリの最新流行が「モダン生活」スタイルとして東京・大阪へ即座に伝えられるのは面白い。

・イン・スタイル(p140)、日常生活の風景からの発見(p163)、ロンドン・メイフェイア地区のブライト・ヤング・ピープル(p185)なども興味深い。

・個人的には、自動車(p210~)と腕時計(p267~)の記述に興味が持てた。この時代に懐中時計から腕時計に切り替わるのだな。

世界恐慌によって、よりシンプルさが多用されるなど、そのデザインは変質するものの、ひとつの時代精神を体現するスタイルとして、アール・デコの世界を楽しめた。

アール・デコの時代
著者:海野弘、中央公論新社・2005年4月発行
2016年12月19日読了

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