アメリカ東海岸を極西、東アジアを極東とする平面の「世界」から、丸い「地球」へ。本書は、人々の世界観が実質的に変化した19世紀の半ばに焦点を当て、グローバリズムの軌跡とコミュニケーションの変容のプロセスを、鉄道、蒸気船、電信に着目して描写する。

・イギリスによるインド航路・東アジア航路の開設(p80)、アメリカによる大陸横断鉄道+太平洋航路の開発と、これに対抗するカナダ=イギリスの構図(p184)が面白い。結局は英米によって地球の丸さが現実のものとされたことになる。それにしても、イギリスのカリフォルニア領有、あるいはアメリカによるカナダの併合が実現していたら、いまごろの世界はどうなってただろうか。興味深い。

・長崎の石炭がここまで重宝されたとは知らなかった。

・1860年代のアメリカ人コフィン氏の西回りの世界一周の旅は興味深い。瀬戸内海の絶景はこのころから世界的な観光名所になっていたんだな(p134)。

グローバル化において、世界の共通のシステムと異質の文化が、より少ないコンフリクトで折り合える調和点を模索する必要性(p213)は、その通り。
それにしても『米欧回覧実記』の事実上の著者、久米邦武のリアリストぶりには舌を巻く。世界的な変遷期、すなわち「地球の縮小化」(p17)の余波の中で生じたのが幕末・明治維新期の日本史であることが明確となり、興味深く書を閉じることができた。

世界一周の誕生 グローバリズムの起源
著者:園田英弘、文藝春秋・2003年7月発行
2017年9月30日読了

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