国民党による恐怖支配、大陸渡来の外省人と土着の本省人の確執、台湾の闇社会。1970年代の中華民国を舞台に、秋生の青春が流れてゆく。
殺害された祖父。殴り合いと刀定規を交わす喧嘩、親友のファイアーバード、そして文化人類学的多様性という観点から見ても括目に値する(p130)A片(笑)。序盤は、不思議な「狐火」を交えた物語にぐいぐいと引き込まれる。

・二十年前の切符……(p164)。『彼女なりのメッセージ』の章がおもしろ哀しく、秀逸だ。

・『恋も二度目なら』の「じゃ、あたし、お嫁にいっちゃうね」 毛毛の言葉の深い意味。そのニュアンスを本当に理解した瞬間の、秋生の咆哮には泣けた(p402)。

・意を決しての大陸行。国民党と共産党の内戦の歴史と絡まりあいながら、砂の地で一族と「兄弟分」の運命を、そして祖父殺害の真相を秋生は知るのだ

時代は流れる。大地は動く。魂は躍動せねばならない。エピローグの「わたしの心は、そうやって慰められる」(p486)の件には、ああ、人のありかたを思わずにはいられない。

重いテーマをユーモアとペーソスで煮詰めた傑作。直木賞受賞もさもありなん。


著者:東山彰良、講談社・2017年7月発行
2017年10月21日読了
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流 (講談社文庫)
東山 彰良
講談社
2017-07-14