ヴィクトリア朝時代の物語詩を朗読向けに翻訳。美の香り豊かな名訳文が物語を惹きたててくれる。

・3人の幼きときから青春の日々への変遷は、アニーとイノックを結びつけ、フィリップを良き隣人として運命付ける。幸せな日々はしかし、突然の悲劇に見舞われる。新しい運命をアニーと子らは受け入れる。

・漂流の10年。変化(へんげ)したイノックの身体に、それでも神に支えられた精神は宿っている。そして帰郷へ。

・暖かな光の中に、"他人"となった元家族のだんらんを覗き見る悲劇。張り裂けそうな心を必死に押さえ、イノックは一人生きる決意を新たにするのだが……。

真直ぐに堂々と生きてきた。最愛の人の幸せをたしかめた。そして最期を悟り、語ること、想いを託すことのできたイノックは、まだ幸せだったのではないだろうか。

暖かな思いをもって読了。紙面の質も装丁も近年のものと違って格調高いつくり。文芸本はかくあるべし。

ENOCH ARDEN
イノック・アーデン
著者:Alfred Tennyson、原田宗典(訳)、岩波書店・2006年10月発行
2017年12月10日読了

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イノック・アーデン
アルフレッド テニスン
岩波書店
2006-10-04