物語、それは人の生の記憶。絆、それは人の交わり。それが連綿と続くこの世界の美しさよ。
物語には終わりがある。それを紡ぎだすのは、その人の人生観しだい……。
恥ずかしながら、湊かなえさんの著書を読むのは初めてだ。『空の彼方』から『旅路の果て』まで、時に深く感情移入しながら味わい深く読ませてもらった。

・ハムさんとわたし。『空の彼方』で問い詰められるは"人生の選択"。そのラストを読者に委ねるかたちをとりながら、『過去へ未来へ』『花咲く丘』『ワインディング・ロード』『時を超えて』『湖上の花火』へと、それぞれの主人公によるラストシーンが紡がれる。
・42歳のキャリア・ウーマンは自分の生き方を反芻し、家族のために粉骨砕身働いてきた父親は、娘を理解できないまま中年ライダーとなって北海道を駆け抜ける。希望の命を宿すも癌と向き合う若い女性。夢をあきらめるために北海道を訪れた男。それぞれの"人生の選択"と『空の彼方』がクロスする情緒的な瞬間は奇跡といえよう。
・『街の灯り』から『旅路の果て』へと続く流れは、物語地の終着点。"おばあちゃん"が萌を静かに諭す描写は実にハートフル。そして個人的には萌の、「最後かどうかは……」(p348)の言葉に静かに勇気づけられた。

一期一会の出会いによって「物語」が受け継がれ、それぞれの主人公の結末が紡がれる。
そして『街の灯り』と『旅路の果て』において、われわれ読者は、人の絆が醸し出すひとつの奇跡を見出す。連作短篇の醍醐味を存分に味わえた。

物語のおわり
著者:湊かなえ、朝日新聞出版・2018年1月発行
2018年2月28日読了
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物語のおわり (朝日文庫)
湊 かなえ
朝日新聞出版
2018-01-04