1920~1930年代の多種多様なカタログ・ちらし類から、モダン都市ライフを取り巻く文化装置を解説する一冊。現在からみても斬新な、豊かな消費文化の情報が解き明かされる。

・規制が少ない時代なのか、電気鉄道会社は沿線への住宅供給だけでなく、電灯用電気の供給販売まで行っていたことが、阪神急行電気鉄道のパンフレットを例に示される(p31)。
・「六甲苦楽園(温泉)」「春の摩耶山」「山は朗らか(六甲ケーブル)」などのカラフルなパンフレットは見て楽しい。生活水準が向上し、庶民でさえ郊外の行楽地へ足を延ばす、そんな光景がありありと浮かぶ(p34,46)。
・大正9年にはウインタースポーツとしてのスキーが活況で、スキー臨時列車なども準備されていたのか(p68)。
・「世界服飾文化博覧会」はとても興味深い。西洋やAA諸国のファッションに交えてMade in Japan製品の飛躍ぶりを示す内容は、満洲国「新京」の完成した昭和9年という時節もあって、さぞ壮観だったのだろう(p94)。
・「百貨店とファッション」と称する8ページに及ぶ内容も興味深い。新しい生活文化に触れる場所という点では、現代も変わらない(p102)。
・百貨店と並びモダニズムを代表するは「ホテル」だ。各地のリゾートホテル、都市型ホテルを合せて14ページもの紹介は充実している。甲子園ホテルも六甲山ホテルも、失われたのは惜しいなぁ。

戦前日本の都市生活は、実にカラフルだったことがわかる。

京阪神モダン生活
著者:橋爪紳也、創元社・2007年12月発行
2018年3月27日読了
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京阪神モダン生活
橋爪 紳也
創元社
2007-12-01