暗黒大陸。この言葉に込められた、アフリカの歴史を否定する見解から脱却し、黎明期からの独自の地域史・交流史を探求する動きをコンパクトに紹介する一冊。アフリカ入門書としても適切かと。

・驚くのはその歴史教育だ。1922年にイギリス領・ウガンダに設置された大学に歴史学講座が開かれたのは1949年、その内容はヨーロッパ史とイギリス史のみで、かろうじて「熱帯アフリカ史」科目が設けられたのは1951年だ。その内容も奴隷貿易、アフリカ探検家、特許会社、キリスト宣教師、アフリカ分割と第一次世界大戦と、アフリカ社会に発起する分野は何もなかったのか(p17)。アフリカの年と呼ばれた1960年に、自国と自民族の歴史の奪回が悲願であったことは大いに納得できる。
・第3章はアフリカについての記述の歩みを概観する。15世紀まではヨーロパ人(ヘロドトス、プトレマイオス)・アラブ人によるものに偏っており、16世紀になるとアフリカ人自身の記述が登場する。初期はイスラームの影響でアラビア語だが、後に各王国が独自の文字を登場させる。大航海時代の探検家の記録は、やはり偏っているなぁ。植民地時代~1950年代は黒人に対する差別が当然とされた時代でもあり、ヨーロッパ人は人文社会よりも自然に重点を置いていたらしい。アフリカ人自身の歴史の記述は、例えばジンバブエ遺跡が現地の住民によって建設されたことは、独立以降にやっと認められたという。
・アフリカ各地に存在した王国と「帝国」は、必ずしも西洋的な尺度の当てはまらない。それでも、緩やかな連邦制の帝国が西洋文化の影響を受けて中央集権制へと変遷する様は面白い。人種・文化の多種多彩なコスモポリタン都市を抱えたスワヒリ文明の考察も興味深い。

アフリカだけではない。彼らの肩を持つわけではないが、朝鮮民族の歴史は1945年の独立以降に正当化されたし、現在中国共産党の圧政下にある各少数民族の歴史は闇に隠されたままだ。規模はそれぞれにせよ、民族自決の実現したときにこそ、「本当の歴史」が明かされるということだな。

アフリカ史の意味
著者:宇佐美久美子、山川出版社・1996年9月発行
2018年4月7日読了
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アフリカ史の意味 (世界史リブレット)
宇佐美 久美子
山川出版社
1996-09-01