男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

アニメ・コミック

ポツダム宣言を受諾せずに徹底抗戦して敗北した日本は、1946年に東西に分割占領された。それから16年、日本人民共和国・東トウキョウの十月革命駅(旧上野駅)人民食堂の給仕係として働く杉浦エミーリャ19歳の"裏の活動"に、日本人民の哀しみの姿が描き出される。
・かつて恐怖政治でソビエト人民を支配した"人類の敵"が今度は東日本を支配する-? "ある人物"の争奪戦と逃亡劇は今回も抜群のおもしろさです(『スターリンの亡霊』)。
・『江戸前の二人』。"二人"の意味が最終的に明らかになる構成には脱帽です。「妬けるわね」がキーワードか。
・『美しい歌はいつも悲しい』は現実の日本のアーティストTWEEDEESとのコラボ。ロックに飢える東側の若者へ音楽を届けること。それは命を届けることでもあるのだな。
・ついに共産主義国家・日本人民共和国による西日本侵攻計画が現実のものに。母や知人に別れを告げ、死を覚悟でひとり阻止に向かったエミーリャは結局とらえられて……。エミーリャに銃口を向ける実の父親の心境やいかに。そして後半のダイナミックな活躍がスゴイ! そして最後は……。(『霞ヶ浦の怪物』)。

共産主義と日本文化の入り混じった”赤い東京”で繰り広げられる諜報戦と命のやり取りは絶品。ハートフルな物語も良し。6巻のすみやかなる”安定配給”に希望を託します。
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最近はまっています、かげきしょうじょ!!
ジャケット/歌詞カードのイラストは斉木先生の描き下ろし。学園で戯れる7人の姿が実に良いです。
DISK1は劇伴集。軽快なリズムの『紅華歌劇団』からはじまり、『桜の下の邂逅』、心に刺さる『その涙は?』、コケティッシュな『安道先生と予科生』等、マーチからバラード、ホラー調まで44曲。『彩子』『暁也』など個人テーマ曲も。個人的には『未来のオトメ達』に一票です。
DISK2はボーカル曲メイン。校歌『桜吹雪舞うなかに』(バリエーション8曲!)は7人の個性が垣間見られて面白いですし、『彼の地へ』『My Sunset』(フルバージョン)『試練の時』も良いです。
『溢れる想い』はさらさと愛のハーモニーが素晴らしく、未発表曲のままなんてもったいない!

でも、しかし……、七海ひろきさんが熱唱される『愛を乞う歌』がすべてを持っていきます! 諏訪部順一さんver.もすごいです。本当にぜひ、ぜひ一聴を!

「宝塚」の斉藤恒芳さんが手がけられた楽曲はどれも素晴らしく「紅華ワールド」に存分に浸ることができます。まさに、さらさたち紅華乙女の「強く、正しく、美しい」歌と劇伴曲の集大成! しばらくはリピート再生決定です。

ポツダム宣言を受諾せずに徹底抗戦して敗北した日本は、1946年に東西に分割占領された。それから16年、日本人民共和国・東トウキョウの十月革命駅(旧上野駅)人民食堂の給仕係として働く杉浦エミーリャ19歳の"裏の活動"に、日本人民の哀しみの姿が描き出される。
・エミーリャ、西トウキョウでビキニを着る!(『エミーリャ西へ』) これだけでも4巻を買った価値があろうというもの。……まぁ、実にみじめで哀れで不本意な状況ではあるが。そして彼女に想いを寄せるトシユキの「俺にはやるべきことがある!」には期待が持てる。
・国境監視官「クリスマスはひとを赦す日だ」には、エミーリャもぐっと来ただろうなぁ(『聖夜の奇跡』)。
・碓氷峠が舞台となる『あの山の向こうに』ではエミーリャの父親の秘密が明かされる。今後の展開が楽しみだ。
・「お願いよ。私が〇〇にならないうちに…壁をなくして」恋より使命を選び取ったエミーリャ涙の言葉に、胸を打たれた(『また会う日まで』)。そしてエミーリャの行動を監視する謎の”西の男”。その目的は何なのか、これからも目が離せない。

共産主義と日本文化の入り混じった”赤い東京”で繰り広げられる諜報戦と命のやり取りは絶品。「西側日本への侵攻!」が画策される5巻のすみやかなる”配給”に希望を託します。

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1920年代後半のニューヨークを舞台に、やる気に満ち溢れた田舎娘が新聞記者として成長してゆく姿を、当時の世相と合わせて垣間みる……な物語。日本でいえば昭和ヒト桁にあたるのか。
・グレタ・ガルボ、サーカス団、フォード自動車工場、禁酒法、ギャング団……。時代のテーマがてんこ盛りです。
・自動車工場の非人間的なライン作業の描写はキツイ。仕事を離れることでホッとしたジョーの姿がけなげ。
・「ここは〇〇〇ですか?」(p115)には笑わせてもらいました。『マンハッタンの休日』は肩ひじ張らずに読める面白さ(某映画作品に似ている? そこは御愛敬)。「かぶりつくのよ」(p123)も良いなぁ。そしてチャールストンがステキです。

「マンハッタン、私の街!」(p154)そしてジョーは真のニューヨーカーになる。
華やかな表舞台だけでなく、この時代の負の側面を隠すことなく物語に盛り込み、愉しい世界観に昇華させていることは特筆できます。
楽しい物語をありがとうございました。
「ベルと紫太郎」とのコラボも読みたいな……。
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レトロ感と現代性の両立。いや、華々しくて嬉しくなります。個人的には『売場迷宮』がお気に入り。
・20世紀初頭、海外との交易が盛んな日本のとある地方都市が舞台とある。神戸を思い浮かべながら読み進めます。
・華美なイラストと心地よいコミックが絡み合い、デパートを色づけてゆく。
・千紅会ポスターもなかなか。
和装と洋装の混淆した大正レトロ・昭和モダンの華やかな香りは最高です。続刊を待ち望みます。
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財閥の三男坊と貧乏女優の恋物語。ベルの可憐さに魅了され、二人のなかなか進展しない関係にワクワクしながら、大正期の生活風俗と豊かな文化の薫りを存分に愉しめます。

・ベル、紫太郎(したろう)、㐂代(きよ)、伊之助だけでなく、他の登場人物のファッションも気になるところ。観劇する市井の人たち、デパートに集う若い男女、横浜と帝都を闊歩するモダン・ガール(この表現はまだ早いか)。大正中期~後期の「時代の粋」が伝わってくる。
・豆腐を使った「洋食」には笑わせてもらった。
・枠外下の「貧乏ベル飯」(笑)シリーズが、哀愁あって良し。
・”幕間”のコラムと舞台衣装の紹介が楽しい(髪型と帽子、女学生スタイル、戦前の女性の職業、松井須磨子のカチューシャの唄、ラムネ、シュークリーム、ハガキ、等々)。

ただ、貧富の絶望的な格差、小学校中退→セル人形色塗り稼業→女優(㐂代)、女性の識字率の問題など、この時代の負の側面を隠すことなく物語に盛り込み、愉しく華やかな世界観に昇華させていることは特筆されるべきと思います。
それにしても、作中に盛り込まれた大正時代のうんちくがすごい。作者は何者!? ツイッターを見ると……1922年生まれでしたか (^_^;)
続巻も楽しみにしています!
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「片渕須直監督、特別監修」ってことで表紙買い。精巧に作られた模型で世界観を再現しながら、作品の魅力が深く語られます。総力特集、実に65ページの大ボリューム!
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の新規追加シーンの一部が紹介されます。本邦初公開?

・冒頭、廣田恵介さんのイントロダクション「あなたには、この世界 どんな風に見えますか?」で、本気度がうかがえます。アニメーションの制作素材と模型のコラボ、期待できます。
・映画紹介に続く、大正14年から昭和21年までの「年表」がすごいです。世界と日本の動きと作品内の時間的推移がよくわかります。
・フィギュアを改造してジオラマ化。作品世界が再現されます。1/20北条家、台所、防空壕のみならず、「灰が峰沿いの段々畑」ってすごいぞ。
・戦艦「大和」、重巡洋艦「青葉」、広島の乗り物(廣島電鉄150形、200形、呉市交通局35形電車、等々)。深いです。
・片渕須直監督の仕事部屋。『名探偵ホームズ』で、学生でありながら脚本家って……。
・「荒野のコトブキ飛行隊」見どころ紹介は第3話。二宮茂幸さんと岡部いさくさんの誌上コメンタリーが面白いです。
・「艦これ」連載は「秋月」。他にSU-122-54、ワンダーフェスティバル2019冬、等々。

原爆ドーム、呉軍港、米海軍HELLDIVER編隊、B-29等が再現され、「カントク片渕の視点」として解説が加えられています。
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」をさらに愉しめる内容。期待以上! 買って大正解でした。

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連載40周年記念ということで足を運んできた(2017/12/16)。

広くない会場の95%を占めるは、やはり女性だ。当時のカラ-版を含む原稿が多数、ガラスパネルに納められ、それを見るだけで熱いストーリーがわかる。
王道を行く大河ロマン。本物は、やはり良い。

僕は男だから興味なし、のはずだった。何を間違えたか、レンタルビデオ店で手にしたアニメ版『ガラスの仮面』に心を奪われたのが2000年代という……。

で、「紅天女」って、まだ決着がついてなかったんだな! 昭和、平成、そして次の時代へ持ち越されることになるとは。
原作者の池内すずえ氏のパワーはスゴイな。見習わないと!


芸術に触れるのは小さな非日常。空間とともに楽しむのが吉だな。

『ガラスの仮面』展
美術館「えき」KYOTO
2017年12月25日まで開催
http://www.asahi.com/event/garakameten/

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先天性聴覚障がいという衝撃は、小学生クラスにとって大きい。人と違うことへの興味と、排斥への変節。いじめの連鎖と、それが破壊するもの。時が癒してくれること。そして、取り返しのつかないこと……。
母親の"耳から引きちぎられたイヤリング"は、いじめ少年に社会の残酷な現実を突きつける。

京都アニメーションの映画『聲の形』を観てきた。主人公、石田将也(イシダショウヤ)と"転校せざるをえなかった"少女、西宮硝子(ニシミヤショウコ)の手話教室での再会は、5年分のわだかまりを思い出させる。嬉しさ半分、胸奥深いところの古傷もうずく。それでも、硝子は友達になることを受け入れた。

将也。ガキ大将転じて小6からの孤立。人を見ず聞かず友人もなく5年、硝子との再会が転機になれば……。
少しの勇気。仲間も8人に増え、中盤は幸せな高校生活が続く。西宮一家にも暖かなだんらんがある。
だが、二つの断絶は突然引き起こされるのだ。

ラスト前の花火のシーンは幸福に満ち満ちている。それが直後の悲劇の前触れであるにせよ。

愛想笑いが癖になった人生? 哀しいことだ。
人を見ず、話を聞かず、殻に閉じこもった人生? 打破すべきだ。

THE SHAPE OF VOICE――。その意味が込められたラストシーンをスクリーンいっぱいに目の当たりにしたとき、思わず目頭が熱くなった。

http://koenokatachi-movie.com/

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明治・横浜のレトロな日常と「ちろり」嬢ちゃんの心情が丁寧に描かれる叙情画。
それは「かもめ亭」で丁寧に淹れられる一杯のコーヒーのよう。

この6巻では、マダムとちろりの「絆」がテーマのようです。

『新月』
眠れない夜。波の音とともに押し寄せる不安の連鎖がちろりを追い込みます。マダムの思い遣りに気付かなかった自分を顧みつつ、かき消された感情を振り払い、"その味"と星空を楽しむちろり。良いです。

『ブラウン夫人』
腰を悪くし外出できない常連のたっての頼み。「かもめ亭のカヒーが飲みたい」に応えるべく、お屋敷へ出かけるマダム。当初のそわそわした不安にとまどいつつ、その原因に思い当ります。かもめ亭になくてはならない存在……。そこへ現われたちろり……。
お屋敷のベッドから想いはに馳せ、香りと「かもめ亭」の情景とを愉しむブラウン夫人……。
真のサービスに触れた、云々の評論を超えた物語。

次巻では、ちろりに恋の自覚が観られるか? 楽しみです。

馬車通り(現代化されすぎていますが)を南下し、日本郵船横浜支店の壮大な建築物に魅入り、山下公園を散策し、氷川丸を眺望し、ホテルニューグランド本館の姿を楽しむみつつ、「ちろり」の時代を想像する。先日試してきましたが、なかなか良かったです。


ちろり 横濱海岸通り21番地-B 海の聴こえる喫茶店にて 6巻
著者:小山愛子、小学館・2014年10月発行
2014年10月13日読了

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