男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

旅行・地域

昨日の続き。本日はメイン会場を訪問。平日なのに観客の多いこと!(2012年5月31日)

こっちは当たりだった。特に『清盛青春ゾーン』には大河ドラマの撮影で使用された衣裳や小物、松山ケンイチの等身大フィギュアなど、見応え十分。わずか170日で終焉した福原京の復元を試みた3D-CGも良い。

『海の覇者ゾーン』が気に入った。太宰府による大陸貿易に横やりを入れ、瀬戸内航路を開拓するとともに、当時の大国の威信を信用力に銅貨"宋銭"を流通に取り入れて独占したことが、平家の発展の原動力であったことが解説される。その根拠地が"大輪田の泊"か。
いまさらながら、神戸は平家と関わりの深い歴史を有することが理解できたぞ。

それにしても、ホテルニューオータニをはじめ、かつて華やかな賑わいを見せたハーバーサーカスの廃れ具合といったら……。地方都市の定めと言えど、物悲しいモノがあるな。

KOBE de 清盛 2012
http://kobe-de-kiyomori.jp/
2013年1月14日まで開催

「神戸にひろがる平清盛の夢」だそうな。
地元民として看過するわけにいかないので出向いてきた。(2012年5月30日)
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歴史館は、清盛が造築したとされる"経ヶ島"の跡地に設営されている。まず入場者を出迎えるのは、地方官吏視点の神戸史パネルだし、上映アニメの声優は棒読みだし音量はデカイし、正直な第一印象は「金返せ!」、でも会場を奥へ進むにつれて納得する内容だとわかった。

祇園遺跡などで発掘された宋銭、白磁器、青磁器、須恵器こね鉢、播磨産瓦、平安京から移築された故の京都産瓦、等々を楽しめた。

個人的には、大輪田泊から兵庫津、兵庫港から神戸港への発展を表す『神戸の港の歩み』が良かった。古代から中世、近世から近代、現代にかけて人の手が加えられてきたのが神戸港。法隆寺の古文書に"弥奈刀川"と記された、湊川河口を利用した船泊が起源か、なるほど。

ビデオ上映に頼りすぎの感がある。平安末期の時代背景の説明が不足しているように思うし、土産物売り場は半分で良い。3,000円の清盛弁当なんて、わざわざ誰が買うんだ?
展示内容は良いのだから、構成を再考するべきだな。

KOBE de 清盛 2012
http://kobe-de-kiyomori.jp/
2013年1月14日まで開催

ハンガリーの画家、カポイの「収穫の日」がお気に入りだ。初秋、村人総出で農作物を大量に収穫する、幸せあふれる楽しげな作品だ。人物ひとりひとりの表情が良い。……30万円か。う~む。

本展の看板作家はチェコのレタック氏。その代表作「ヴルタヴァ・夜明け」のお値段は、実に294万円。こんなのをポンと買える身分になりたいものだ。

第33回東ヨーロッパ絵画展-伝統と浪漫の香り-
2012年5月1日まで開催

大丸神戸店7階 美術画廊
http://www.daimaru.co.jp/kobe/

明治の文明開化の中、先人たちの伝統と挑戦の融合した近代日本美術も気になるところ。
平成の大修理さなかの姫路城を横目に入館した。(2012年4月24日)
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美人画は1907年に始まった文部省美術展覧会(文会)において登場し、1915年には日本画のジャンルとして確立したという。
大正期には、女性の生活と内面の描出が試みられるようになり、内的生命を宿す美人画の傑作が続出したそうな。

お気に入り作品を何点か挙げよう。
■菊池契月「散策」(1934年)
本展のポスターに選定された作品。二匹の黒犬を散歩に連れ出す断髪の少女。萌葱色の背景に梅の花。橙色の着物の鮮やかさが引き立つデザインが気に入った。

■まつ(窓の心の部分が木)本一洋「送り火」(1916年)
盆の夜、故郷で送り火を焚く三人の娘。末娘は、あまり意味のわかっていない表情を見せながらも、姉二人を真似て先祖の霊を還す儀式に取り組む。
背景を巨大な月が照らす中、上がる煙の向こう側が彼岸に繋がるような、ロマンティシズム溢れる作品だ。

■秦テルヲ「母子」(大正末期)
幼子を抱く母親。わが子を力強く護る意志の宿った目と細い眉、締めた口元が印象的だ。
作者は初期に労働者と女性をモチーフとした作品を描き、後に宗教画を手がけたそうだが、なるほど、本作も"耶蘇教の聖母と幼子"を連想させるな。

■勝田哲「朝」(1933年)
本展で一番のお気に入り。
上品なベージュの花柄のツーピースに身を包む、これは若奥様だな。起床して着替えたものの、またベッドに横たわり、お気に入りのレコードを聞く。レコードのコレクションは女性の自慢なのだろう。
品良い家具調度を揃えた洋室の窓は開き、レースのカーテンが朝の風にはためく。この心地好さそうな季節は4月か、5月か。
豊かな戦前都市郊外生活の最後の華。昭和モダンの香りは、やはり良いものだ。

麗しき女性の美
2012年5月27日まで開催

姫路市立美術館
http://www.city.himeji.lg.jp/art/

原元鼓氏は兵庫県神戸市出身、武蔵野武術大学を卒業した画家だそうで、展示作は若い女性をモデルに神戸を背景とした油彩画が多い。嬉しい限りだ。(2012年4月18日)
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お気に入りを3点挙げよう。
■「音・風・第5突堤」(2009年)
一番のお気に入り。
三宮の浜辺通の南側のどこか、都市高速道路の高架下に金色の野原が拡がる。トランペットを掲げた少女の姿の消え入りそうな、幻想的な構図が良い。

■「神戸大橋・夕景」(2007年)
左右から壁となって迫る赤く錆びた橋梁の鉄骨群と、黒ずくめの若い女性の目ヂカラが印象的。

■「声」(2007年)
夜、都会の中の野原にひとり立つ若い女性。白いシャツが引き立つ。上空に未確認飛行物体、でも違和感はない。

ポストカード等の販売品があれば、なお良かったのだが。

原元 鼓 絵画展 ギャラリーあじさい
2012年4月22日まで開催
http://www1.odn.ne.jp/ajisai/

1920年代のパリに活躍した画家たちの作品展だ。これは行かねば。
曇り空の下、六甲アイランドは小磯記念美術館に出向いてきた。(2012年4月17日)
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■マリー・ローランサン「シュザンヌ・モロー(青い服)」(1940年)
1925年からローランサンの家政婦を勤めた女性がモデル。その表情には、あくまでも日常が宿る。マリーは亡くなる2年前に彼女を養女としたそうだ。信義が信頼を生み、家族愛にまで昇華した好例と思いたい。

■モーリス・ド・ヴラマンク「雪景色」(1937年)
Paysage en Neige
冬の凍える空気感が画面からあふれ出る迫力ある作品。暗い雪中の枯れ木の群れが厳しさを顕している。

■児島虎次郎「和服を着たベルギーの少女」(1909年)
青く大きい目を前方に据えた、長いブラウン色の髪を束ねた落ち着きある若い女性。
壁面には赤い幾何学的な花が描かれ、これも赤色のタイルと相まって、白い和服を引き立てる見事な調和。その和服の白いタッチも力強く、モデルの美しさとともに印象に残る作品だ。
本展中、一番のお気に入りとなった。

その他、Diaghilew ディアギレフ率いるバレエ・リュス(露西亜舞踊団)の、マリー・ローランサンが衣裳デザインを手がけた1924年の舞台「Les Biches 牝鹿」の資料や、1928年夏にParisで初演され、古家新が週間朝日に観劇レポートを寄稿したALICIA MARKOVA アリシア・マルコワ主演作「Le Chatte 牝猫」のプログラムなど、興味深いものが展示されていた。

Marie Laurencin and her Era
Artists attracted to Paris
マリー・ローランサンとその時代展 巴里に魅せられた画家たち
2012年7月8日まで開催

神戸市立小磯記念美術館
http://www.city.kobe.lg.jp/koisomuseum/

パリ・モンマルトルの表記に誘われて、異人館で有名な北野の一角、具体的には"ラインの館"の隣にある神戸北野美術館に出向いてきた。平日の午後にも関わらず、観光客の姿は途切れることがない。地元民としては心強いな。(2012年3月21日)
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・"carnet"との記載がある洒落たチケットは、ParisのMETRO、BUS、TRUM共通回数券と同じモノのようだ。入館料500円は高いと思うが。

・1898年築の旧アメリカ領事館官舎を利用し、展示室は4室。その他、回廊にダリの複製絵画やモンマルトルル風景パネル等を展示。

・日本人を含む、モンマルトルに関係深い(であろう)画家の絵画が展示販売されている。モノにもよるが、お値段10万円前後より。有名ポスターの複製も15万円前後から。

・ムーラン・ルージュつながりなのだろう、ロートレックの有名なリソグラフやデッサン画が数多く展示されていた。

・江戸時代まで田畑に囲まれていた北野村。明治になって居留外国人に土地が貸し出され、眺望の良さも手伝って、しだいに異国文化溢れる街並みが形成されていったことが、展示資料を通じて理解することができる。
モンマルトルもパリ郊外の農地だったし(風車はその名残)、この点でも両者は共通していたんだな。

お土産にポストカード2枚を購入。
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Painters of Montmartre
神戸北野異人館街・パリモンマルトル地区友好交流展
神戸北野美術館
http://www.kitano-museum.com/

"昭和モダン"の表記に釣られて、六甲アイランドは小磯記念美術館に出向いてきた。(2012年1月9日)

1936年に「反アカデミックの芸術精神」を掲げて結成された新制作協会と、その展覧会に賛助出品し続けた大御所、藤島武二の作品が展示されていた。

藤島武二「山上の日乃出(碓氷峠)」(1934年)等も良いが、やはり人物画に惹かれるな。
■小磯良平「化粧」(1936年)
全裸になって簡易鏡台に向かう若い女性が背中越しに微笑む。シュミーズもワンピースも市松模様の床に脱ぎ捨て、カーテンを開けたガラス窓からは、鎧戸を通して朝日が部屋に差し込む。スリッパではなくハイヒールを履いた妖艶な姿は、しかし美しい。

■伊勢正義「キャバレー」(1936年)
斜め上からの俯瞰。アコーディオン弾きの躍動感。店内に響き渡るダンス音楽とホステスの囁きが画面から溢れそうだ。
ダンスを踊るペアのうち、青い水玉ワンピースの女は、別のテーブルで噛み煙草を吹かす男を視線に捉えて離さない。このドラマ性に惹かれた。

■内田巌「風」(1946年)
戦後の世相を表す曇り空の下、左方を向く少女に向かい風が吹き付ける。まなこを見開き、まばたきひとつせず、新しい時代を前のめりに歩め!
戦後の作品群から唯一、この作品が気に入った。凜とした表情が実に良い。

"反アカデミック"の芸術精神と謳いつつ、アジア・太平洋戦争の遂行には新制作協会も積極的に協力したようで、1942年第7回展のスローガンは「大東亜建設に捧ぐ」ときた。国策に巻かれ、戦後は掌を返すように平和主義に転じたってわけか。興醒めだな。

小磯良平のポストカードを購入したぞ。
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神戸市立小磯記念美術館
http://www.city.kobe.lg.jp/koisomuseum/

大正から昭和初期にかけての時代、特にその文化に興味が沸いたので出向いてきた。(2011年11月16日)

姫路・書写山の麓にある美術工芸館。ここを訪れるのは初めてだ。建物の外観は庭園と相まって、竹藪に囲まれた日本家屋を想わせる。
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会場は大きく三つだが第1会場へのアクセスは階段のみ。当日は車いすの観客が多かったようで、階段昇りを手伝う警備員はご苦労さんでした。
……バカでかい太陽光パネルの予算で、リフトを設置すれば良かったのに。(せめてスロープ)

■竹久夢二
まずは夢二。肉筆画やスケッチも良いのだが、やはり雑誌の表紙画と挿絵、ポスター等の印刷物こそ素晴らしい。ひとの愛憎、郷愁を描く抒情画の第一人者として絶大な人気を得たのも肯ける。
・版画「港屋絵草紙店」が良い。バーバリーコート着用の夢二(本人)、タマキ(妻)、彦乃(19歳の愛人)を描くこの絵、後日の波乱を予感させる雰囲気……ではないな。
・雑誌"婦人グラフ"の表紙画はよく見る。挿絵は本文と相まって、これも良い雰囲気だ。「星合」が気に入った。
大正13年創刊の"婦人グラフ"は15年まで夢二人気にあやかり、昭和3年に廃刊、とある。看板作家を失ったらそうなるな。
・「少女十二ヶ月双六」(昭和3年) 12月の花の日會の装画が好みだ。
・SenoW セノウ楽譜の表紙を250種も描いたのか。版画「サラオーりょう歌」「ボガボガ・ベルラ」が良い。
・若き日の写真。すごくダンディじゃないか! 県立神戸第一中学校に入学したとは知らなかった。オリエンタルホテル(神戸の外国人専用ホテル)、北野異人館街、メリケン波止場の夜霧と汽笛、すずらん街灯といった風物が彼の作品に影響を及ぼしたのなら、何か嬉しい気分だ。
・恋愛、結婚、別離を繰り返し、49歳で孤独死か。寂しい最後だ。

■高畠華宵
大正から昭和にかけて夢二と人気を二分した。自らの理想とする男女を作品に具現化したが、理想の女性には巡り会えなかったようで、78年の生涯を独身で終えたそうな。
・「娘二十まで」 雑誌"婦女会"の挿絵だが、8枚でストーリーがわかるような秀品だ。その中のメガネ青年にピン、ときた。現在でも通用しそうな男性のファッションは見本になる。
・「七転八起開運出世双六」 雑誌"講談倶楽部"の附録だ。振り出しは店員、学生、女性事務員から、上がりは華族と富豪と実にわかりやすい。

■蕗谷虹児
・昭和9年の雑誌"令女界"の表紙画も良いが、"少女倶楽部"の挿絵に魅せられた。薄く紅づく自然な頬と傘を並べてのポーズが、実に可憐だ。
・大正12年の関東大震災。その災厄と復興への歩みを描いた絵はがき集には瞠目させられた。「夜に迷ひし鳥の如(バラック屋への帰途)」に遺族の癒されない悲しみと不安感がありありと描かれている。

■多数の魅力的な作品からお気に入りをピックアップ
・川西英「サロメ」 黒布に金文字で"SALOME"、ビアズリーをオマージュした人物像も○。
・川西英「短冊 四図」 第一次世界大戦前に深く根付いた"国際化"が感じられる。当時は日米戦争に突入するとは信じられなかったに違いない。
・山村耕花「踊り」 日本国内とは思えない1924年の舞踏場に、ドレス女性の華やかさが踊る。
・瀧秋方「近代麗人画譜・港町の日本娘」 異国の港町で笑みを浮かべる日本女性。碧い着物、断髪にパーマ。外国慣れした表情。洋行モダンガールだな。
・小早川清「近代時世ノ粧内六 口紅」 モダンガールを描いたシリーズ。見ようによっては"ケバイ"が、最先端を行く女性たちだ。この絵は入念に化粧する女性が題材。高級懐鏡に映る自らの唇に紅い紅を塗る。短い髪。カールさせたもみあげ。モダニズムな和装美を纏い、華やぐ色香をかもし出す。

http://www.city.himeji.lg.jp/kougei/
姫路市書写の里・美術工芸館
大正ロマン・昭和モダン展 竹久夢二、高畠華宵とその時代
2011年11月20日まで開催

蕗谷虹児「キューピッドを飼ふ人」の一筆箋、高畠華宵「薔薇の夢」等のポストカード、展覧会図録を購入した。

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女は海~♪
ジュディ・オング。200万枚のセールスを記録した"魅せられて"が衣装とともに印象に残っている。
その彼女が女優業、歌手業のかたわら、25歳から始めた木版画の展覧会が開催されているので出向いてきた。(2011年11月9日)

10時頃に到着し、駐車場もギリギリ空いていた。
ふと気づくと、10時30分頃には入場行列が出来ていた。……12日と13日はとんでもない混雑になりそうだ。

1階展示場では"花"をテーマにした版画作品と、スケッチ下絵、版木等を展示。
目玉作品は2階に集められている。
力強く、繊細な60点もの版画はどれも魅力的だが、特に次の4点が気に入った。
・夏の涼夢:庭園の緑と屋内の朱。バランスと陰影が素晴らしい。
・銀閣瑞雪:雪の中であらたになる人の意志の強さと、大地との調和を感じ取った。
("瑞雪 ずいせつ"とは幸運の雪を意味するらしい。)
・桂林水遊:切り立つ岩肌の表現が見事。小さき人の遊ぶ河、赤い御堂。すべてを見下ろす構図はまさに絶景なり。
・鳳凰迎祥:灰色の空が青い池に映え、中央には金色の大佛が神々しい。

旅先でのスケッチをイメージングし、独自の感性で作品を昇華させる。
日展特選が1点、日展入選も多数。感服だ。

明石市立文化博物館
http://www.akashibunpaku.com/
2011年11月13日まで!

"夏の涼夢"、"銀閣瑞雪"、"花しょうぶ・その2"のポストカードを購入した。

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